鹿が呼んでいる!

今日は山裕子改め白裕子がソムリエールをやっている白金台のフレンチ「REQUINQUER」のオープン日のランチに胃袋女と行った。

最高のマリアージュ

ワインを持っていって良い(持ち込み料はかかる)と白裕子に確認を取っておいたので、昨日の夜まではコント・スナールのコルトン-アン・シャルルマーニュ1996(赤ワイン)を持って行こうと思っていたのだが、深夜になって虫の知らせでセラーを覗くとポール・ジャブレのコート・ロティが非常に飲んで欲しそうなオーラを出していた。
昼過ぎになって白裕子に電話してコート・ロティに合うメニューがあるかどうか確認しようとしたら、忙しいようで電話に出ないのでコート・ロティとコルトンと両方持っていくことにした。
店で席について白裕子からメニューの説明を一通り受けると、なぜ虫の知らせを受けたのかが分かった。蝦夷鹿がコート・ロティを呼んでいたのだ。
スープ、前菜ともにとても美味しい。「仕事がしてある」料理だった。仕事しすぎなくらいかもしれない。
肉料理は主宰も胃袋女も蝦夷鹿を頼んであった。ジビエ特有の鉄分的な苦さはあるが、臭みは全く感じない。なんでも、シェフの後輩の料理人が北海道でハンターになったそうで、ただの猟師とは肉のさばき方、扱い方に格段の差があり、料理に理想的な状態で肉を届けてくれるのだそうだ。
血が滴る臭みのあるジビエもまた一興だが、それならコートロティでなくても、分かりやすいタイプのエルミタージュかラングドックやプロヴァンスの濃厚なワイン(例えばバンドールやフィトゥ)でも合う。しかし、この品のある完壁な状態の蝦夷鹿にはコルナスでもエルミタージュでもなく、コート・ロティ以外には考えられない。
そして、今日持ってきているポール・ジャブレのコートロティの熟成状態、コンディションにはこの品のある蝦夷慶しか考えられないのではないかと思えるほどのマリアージュだった。
蝦夷鹿はこんなに状態の良い熟成したコート・ロティとあわせてもらって蝦夷鹿冥利に尽きるだろうし、コート・ロティもコートロティ冥利に尽きるマリアージュであろう。
飲んで食べている自分は本当に幸せな時間をすごさせてもらった。

胃袋女の北斗孫家拳

コートロティをあけてから胃袋女と主宰のグラスヘ注いだが、主宰のグラスは香りも味もピンボケだった。ところが、胃袋女のグラスは焦点がしっかりと合っていて背筋が伸びた感じだ。何だこの違いは?


主宰:「今日は全く北斗孫家拳が通じていないというか、真理さん(胃袋女)が使ってますよね?」
胃袋女:「そうなの。あたし、蝦夷鹿が凄く楽しみだから、このワインと一緒に楽しみに待っているの。」


ワインに対する愛単独よりも、蝦夷鹿とのマリアージュに思いを馳せるほうが今日はワインが喜んでいるということなのだろうか。
主宰の北斗孫家拳は、どんどん開いて甘みが出てしまった。胃袋女はそのほうがいいようで、主宰のグラスのワインを飲んでいた。主宰は胃袋女のグラスのほうが美味しいので、胃袋女のグラスに入っているワインを飲んでいた。


胃袋女:「もうすぐ鹿ちゃんがくるからね。」


と語りかけるとますます焦点が合って美味しくなっていくコート・ロティ。今日は負けました。

魂の一皿

食事は美味しかった。腕が立つシェフだと白裕子からきいていたが、想像の1.2倍くらいだった。(最初からかなり高いレベルを想定していた。)
主宰:「こんなに一皿一皿すべてに魂入れてたら体が持たないよ!?」
白裕子:「そうなんですよ…。」
シェフ:「頑張ります!」
主宰:「でも少しは手を抜かないと…。俺が来たときだけ魂入れれば良いからさ…。」
シェフと白裕子:「ワハハハハハ…。」

昼の酒

(泡)エドモン・シュルラン カルト・ノワール NV
オジェ村の中庸な締まり具合が良かった。良いシャンパンだ。


(白)ドメーヌ・ユドロ・バイエ オート・コート・ド・ニュイ 2007
07年の白でこのクラスで構造の緩さを感じさせないのはさすがだ。05かと思った。


(赤)ポール・ジャブレ・エネ コート・ロティ "レ・ジュメル" 1996
上記のとおり。
蝦夷鹿に出会えて幸せそうだった。

髪の毛を切ってもらう日

今日の夜は美容師の圭祐が主宰の家で髪の毛を切ってくれることになっていたので、カレーとワインを用意した。
ワインは昼飲んだワインにかけて、「ゴート・ロティ」を選んだ。

再び最高のマリアージュ

主宰のカレーは自分で言うのもなんだが、いつも美味い。ワインで数時間煮込んだりするなど手をかけるからである。しかし今日は2時間後に食べるという状況だったので、ワインで煮込んでいてはアルコールが残ってしまうので、普通に作ることにした。
肉を妙める段階で、いつもよりスパイスの種類を大幅に増やして複雑さを出すことを目指した。
完成したカレーは色はただの「家カレー」だった。そして口に含んでもただの「家カレー」だったが、2秒後にスパイスの香りが口いっぱいに広がってとても美味しくなって実に面白い味に仕上がった。新たな発見があってよかった。


カレーの調理に先立って、「ゴーツ・ドゥ・ローム・ワイン・カンパニー」という洒落た名前の蔵の「ゴート・ロテイ」というふざけた名前のワインをあけて試飲してみた。
パロディは名前だけでなく、シラー96%、ヴィオニ工4%とセパージュまでパロッている(コート・ロティは95%/5%)。味わいはなかなかだが、南アで造っていてアメリカで評価が高いということだけあって、どうしても甘さが目立ってしまう。当然だが、コート・ロティのテロワールから来る品の良さなどは感じるべくもない。
酒を飲みはじめたときは軽いおつまみなどと一緒に楽しんでいたのだが、それほどおつまみを用意していなかったので、ほどなくカレーライスを皿に盛った。


主宰:「ん?なんだこれは?カレーがワインに合うなんて…。」


カレーの辛味とスパイスが、ゴート・ロティの不必要な甘みを舌の上で取り除き、まるでエルミタージュのような味わいになった。本当に美味い。
カレーライスを食べ終わると、ワインはもとの甘いワインに戻ってしまった(それでも美味しいが)ので、ゴート・ロティを飲み終わるまでカレーのルーをおつまみに飲み続けたのだった。

技術料

(飯)主宰カレー
うまかった。


(白)コレクション・プレジール・デュ・ペール・ギヨ ヴィオニエ 2007 VDP
丁寧な栽培を感じる滑らかで美味しいワインだった。


(赤)ゴーツ・ドゥ・ローム・ワイン・カンパニー ゴート・ロティ 2007<南ア>
上記のとおり。2000円を切るワインとしてはかなり美味いと思う。主宰はマリアージュにより7000円分楽しめた。