いい根性の女

いい根性の女

マヤに誘われて、マヤの友達と「銀座の高級チョコレート屋さんでお茶する」ことになっていた。
デルレイという店で、チョコレートが宝石のようにディスプレイされていた。
お茶するスペースがなさそうなので聞いてみると、お茶は別なところで出来ることがわかり、移動した。


メニューを見ると、1000円以下のものは無かった。さすが銀座の高級な店だなあと感心していた。


あられ:「どのコースにしますか?」
主宰:「え?コース?なにそれ。ケーキとか食べるんじゃないの?」
あられ:「メニューの右のほうに、書いてありますよ。フルコース5000円、軽めの入門編のコース3000円です。」
主宰:「コースってみんな甘いものが出てくるの?」
あられ:「そうですよ。いろいろと楽しめていいですよ〜。」
主宰:「ふ〜ん。なんか面白そうだねえ。」
マヤ:「あたし、3000円のコース。」
あられ:「では、3000円のコース3つお願いします。」


ん?主宰の意見は聞かないの?ま、いいか。


店員(女性):「お飲み物にシャンパンなどいかがですか?」
主宰:「甘いのと一緒に泡飲むの?」
店員:「私どもではそういうスタイルを提案させていただいております。」
主宰:「グラスでは何が飲めるの?」
店員:「モエ・エ・シャンドンになります。」
主宰:「モエか、じゃあいらない。」
店員:「合いますよ〜、ワインがお好きなら是非!」
主宰:「いいよ、モエ美味しくないもん。」
店員:「コースのお飲み物は何になさいますか?コーヒーと紅茶のご用意がありますが。」
あられ:「あたしコーヒー。」
マヤ:「あたしもコーヒーで。」
主宰:「僕もコーヒー…、いや、ちょっと待てよ。このスイーツのコースってどっちが合いますかねえ?もし、コースのスイーツが繊細な味だったりするなら、紅茶のほうが良かったりしますか?」
店員:「そうですね…。」
主宰:「お勧めのほうにします。」
店員:「やはり泡かと…(微笑)」
主宰:「そうじゃなくて…(苦笑)」
店員:「紅茶がよろしいかと。」
主宰:「じゃあ紅茶3つで。」


ん?あたしたちの意見は聞かないの?という顔をするあられとマヤ。黙殺。


主宰:「あの女、いい根性してるよなあ。」


一皿目が運ばれてきた。美味しいのは当然だが、目が楽しいのが良い。


主宰:「うん、美味しいねえ♪やっぱり泡飲みたくなってきちゃった。すいませ〜ん!」
マヤ:「さっきの駆け引きはなんだったんですかねえ。」
主宰:「今は飲みたいのよ。今は。」



二皿目を食べ終わる頃には泡がなくなってしまった。


主宰:「赤でも飲もうかなあ…。」


メニューを見ると赤のグラスは一種のみだった。


ブルゴーニュ アリゴテ 赤 1260円」


ん?アリゴテの赤?なんじゃそれ?どうなってんだ?


主宰:「すみません、グラスワインのボトル見せてもらえますか?」
店員:「かしこまりました。こちらになります。いまメニューに書いてあるのを切らしておりまして、こちらのブルゴーニュを同じ値段で出させていただいております。」
主宰:「オート・コート・ド・ニュイか。これをどんなグラスで出してくれるの?」
店員:「普段は1階に用意してある通常のグラスでお出ししているのですが、こちらのディスプレイのグラス(ブルゴーニュ用の丸いグラス)でもお出しできますが…。」
主宰:「それなら一杯頂こうかな。」
店員:「では、ディスプレイされていて少し汚れているのできれいにしてまいります。」


結局あまりきれいになっていなかったので、ワインのグラスを拭くのに良い布巾を今度教えてあげようと思った。
それはともかく、典型的かつ優等生的なピノノワールは三皿目のワッフルとチョコレートにとても良いマリアージュだった。


それにつけても、『切れている』という「アリゴテ赤」とは一体どんな酒なのだろうか?
次に行ったらあるのだろうか?