義人の特権

主宰は重大な手配ミスに気がついた。
明後日が自ら主催するワイン会なので、明日コンコンブルに向けてワインを発送しなければ明後日ワイン会が開けない。
帰ってから荷造りするつもりであったが、荷造りするための箱が無いということに気がついたのだ。
ワインを通販で大量に買いそうで箱を持っていそうな人…。何人か思いついたが、まずギタリストの義人に電話してみた。


主宰:「あ、溝口さん(義人の苗字)ですか?あの〜ワイン発送用の箱ってもってませんか?」
義人:「ああ、あるよ。いまどこ。持っていくよ。」
主宰:「今田町ですけど渋谷で待ち合わせましょうか。やまざきにしますか?それともタントいきますか?」
義人:「今日はタントに用があるからタントにしよう!」


義人とワインをゆっくり飲むのは久しぶりだ。タントタントできちんと食事するのはさらに久しぶりで、ここを本拠地としている義人とここで飲むのははじめてである。


義人:「ノヴェッロかなんかある?」
店員:「ありますよ。一杯800円でボトルで4000円です。」
義人:「それにしよっか?」
主宰:「いいですね♪」
義人:「じゃあ、グラスで二つ。」


イタリアの新酒であるノヴェッロはフランスのヌーヴォーより一足早く、11/6に解禁にになるそうだ。
フランスのワイン法の新酒解禁日に関する規定が世界中で守られているのに対し、ノヴェッロはイタリア国内もそれほど厳格に守られていないということだった。


店員:「ノヴェッロはこちらになります。」

と言ってグラスに注ぎ始める。


(多い…。超大盛りだァ…。)


義人と主宰のグラスに注ぎ終わるとボトルの半分近くに減っていた。
これが800円だとすると、一本は3200円になってしまう。ボトルで頼むより安いではないか!!
さすが超常連の扱いは違う。
用意されていたノヴェッロはとても良いものであり、下手なボージョレーヌーヴォーよりはよほど美味しいいい酒だった。


義人:「一本行きますか!」
主宰:「今日も持ってきたのですね!」
義人:「エヘヘ。」

飲んでみた。うまい。オルネライアとマセトーが大好きな義人がいかにも選びそうな味だ。
義人の持ち込みワインを開けてからは、店員と義人のイタリアワイン談義に花が咲き、主宰の出る幕は無かった。が、たまにはワインの話で盛り上がるのを聞くのも楽しいものだと思った。