一杯のコーヒーが示す人間性

ひょんなことから渋谷のやまざきで、年上のひろこと知り合いになった。
紆余曲折があり、ひろこの地元の東久留米でランチすることになった。
ひろこが母とよく来ているという「いし山」という洋食屋へ行き定食を食べることにした。


ひろこ:「今日はカツレツが無いんだあ〜。残念。」
主宰:「ハンバーグと白身魚もいいじゃないですか。」


主宰は白身魚のフライを注文し、食べてみた。
身が柔らかい。衣はカリッとあがっている。絶妙な火の通し方だ。フライだが、おそらくフライパンで丁寧に焼いていると推察。
ソースは「タルタルソース」と一言で片付けてしまえばそれまでだが、いろいろな材料から作られており相当凝っていると言っていい。
ひろこが注文したハンバーグも一口もらって食べてみた。


ひろこ:「ここは何をたべても表面がかりっとしているのに中が柔らかくておいしいんです。」
主宰:「ハンバーグでこういう火の通し方…。相当なこだわりが感じられるね。カツレツを食べてみたくなるね。おいしいんでしょ?」
ひころ:「そりゃもう!!」


ただ、周りを見回すとどうでもいい近所のおじさんがビールを飲みながら定食を食べていた。


主宰:「ここにいる客の何人が、ここの主人のこだわりを理解しているのだろうか…。」
ひろこ:「分かってないんじゃないかなあ。」


ひととおり食べ終わったが、付け合せの野菜が残っていたので口にした。
塩がかけてあった。


主宰:「これは…!!! ドイツかどっかで取れる岩塩じゃないかな?」
ひろこ:「厨房に『アルペンザルツ』って書いてあるのがありましたよ。」
主宰:「やっぱり…。かなりこだわってるねえ…。ザルツブルクのあたりでとれるやつかなあ?」


次にひろこがいつも行っているという喫茶店「VESTA」に行ってコーヒーを飲むことにした。


ひろこ:「ここは結構おいしいんですよ。」


飲んでみた。


主宰:「…。確かにうまいですね。コーヒーはこうあるべきという『信念』というよりは『固定観念』に近いものを感じるなあ。ここの主人は几帳面ですごくまじめな方でしょ?きっとA型だね。」
ひろこ:「全部あたってます。」
主宰:「現時点での想像だけど、多分ここはいろいろなコーヒー(ガテマラ、マンデリン等)を飲んでも、豆の個性よりマスターの信念が勝ってしまうからあまり違いが際立たないと思うんだけど、あたってるでしょ?」
ひろこ:「言われて見れば確かのそのとおりです。」


ガテマラを注文してみたがまさに想像通りの味だった。
コーヒー一杯でここまで想像させてくれる信念を感じる店は良くも悪くも稀有だ。そういう意味で非常に楽しめた。
豆ごとのバリエーションを楽しむことは出来なかったが、ここのコーヒーは完成度が高くおいしいかった。


東久留米には、かつての人気番組「料理の鉄人」で道場六三郎に「ピーマン対決」で勝ったドイツ人のフレンチのシェフが店を出しているので近々行ってみようと思っている。