死刑

今日はヴィノスやまざき自由が丘店でヌーヴォーのカウントダウンに参加した。
今年は広尾か池袋だと思っていたが、2年ぶりに会うS紀子から誘いがあったので、弟子のマヤをつれて自由が丘へ向かった。

作戦失敗

店員の真由美が有楽町店にいた頃は、行く度に毎回「わっ!!!」って言って真由美を驚かせていた。真由美はやらせではないかと思うくらい驚いてくれて、時には足がすくんで立ち上がれないときがあるので、驚かし甲斐があった。
今日は久しぶりに真由美に会うので驚かすのを楽しみにしていたが、自由が丘店は有楽町に比べるとフロアが狭いので、驚かす隙を見つけにくそうだった。
そこで、驚かす新たな手口を編み出した。


主宰:「おい、マヤ。お前、真由美ちゃん驚かすの手伝え。」
マヤ:「え!? 何すればいいんですか?」
主宰:「真由美ちゃんが俺を見つけたら、驚かされないために絶対に俺に背中をみせずに正面で顔を見合わせて会話するはずだから、話している隙にお前が背後から近づいて驚かすんだよ。いいな!」
マヤ:「分かりました!」


店に到着すると、真由美はレジで忙しそうだった。
さすがに忙しそうなレジを邪魔するわけには行かないので、真由美の手が空いて乾杯の会場に来るのを待った。


宴が始まる時間になって、真由美が2階に現れた。


真由美:「村松さん、こんばんは!」


と笑顔で挨拶してくるが、その表情の微妙な強張りは「今日は驚かされないぞ!」という意気込みの表れでもあった。


真由美と他愛ない話を続けながら、隙を見せないために真由美は瞬き一つせずに主宰を見つめている。


(よし、行け!)


主宰はマヤに目くばせした。


真由美:「キャ!」


少しは驚いたが、間が悪いのと驚かし方が甘いので、立ちすくむまでは行かず、作戦は失敗に終わった。


主宰:「もう、下手糞!何やってんだよ。甘いんだよ、全く。何やっても半端だなあ…。」
マヤ:「…。」

法律違反

2階のレストラン「旬香亭」でのカウントダウンイベントは、23時40分に始まった。南仏のヌーヴォーは既に解禁されているので、最初はロスピタレとラグラーヴのそれぞれ赤白のヌーヴォー4種が楽しめた。
日付が変わると同時に全員で乾杯するために、23時58分頃からボージョレー・ヌーヴォーがグラスに注がれ始めた。


店員の麻本君:「では、皆さんにカウントダウン用のボージョレーヌーヴォーをお配りしますので、注がれたらそのままお待ちくださいね!」


主宰とマヤのグラスにも注がれたが、注がれた直後、何の躊躇もなく口に運ぶマヤ。
あってはならない光景に口より先に手が出てしまった。


マヤ:「痛てっ!」
主宰:「バーカ! なに飲んでんだよ! まだ日付変わってねえよ!」
マヤ:「あっ!そうだ。まだだ…。」
主宰:「あ〜あ、法律破っちゃって…。」
マヤ:「法律なんですか?」
主宰:「フランスの『ワイン法』って法律で解禁日が定められてんだぞ!」
マヤ:「マジですか? 破るとどうなるんですか?」
主宰:「死刑じゃん。この法律は世界中で守られてる厳格な法律なんだぞ!」
マヤ:「マジですか?黙ってればわかんないですよね!?」
主宰:「俺がいま店員に通報すれば、やまざきは来年からヌーヴォー輸入できなくなっちゃうかもしれないんだぞ! あ〜あ…、何てことしてくれたんだ…。」


主宰:「麻本君、今こいつ(マヤ)、ヌーヴォー飲んじゃったんですよ。馬鹿でしょ?」
麻本:「まあ、楽しければいいってことで(笑)。」
マヤ:「あれ?ん? なあんだ…。」


ちなみにフランスには死刑はありません。

今日の酒

(白)ロスピタレ ヌーヴォー・ブラン 2008
(赤)ロスピタレ ヌーヴォー・ルージュ 2008
ロスピタレのヌーヴォーはいつも分かりやすい。初心者向けに良い果実味主体の仕上がりだ。


(白)ドメーヌ・ラグラーヴ ヴァン・ヌーヴォー・ブラン 2008
(赤)ドメーヌ・ラグラーヴ ヴァン・ヌーヴォー・ルージュ 2008
こちらは玄人向けの味。葡萄から何を抽出したいのかという考え方が、ポンソに共通しているように感じられるのは気のせいか?
今年も旨いです。


(赤)ドメーヌ・シャテルス ボージョレー・ヌーヴォー 2008
2006は味が分かりやすく、2007は深みを持たせようとして考えすぎた感があったが、今年はそのバランスが取れていて良いように思う。


(赤)ドメーヌ・ペール・ギヨ ボージョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー 2008
ここのヌーヴォーは、その品質の高さ故、いつも解禁日にはガチガチなので、主宰の予約分は年末か年明けに楽しむことにしよう。