ピノノワールにかける念

今日はハッシーとマヤとやまざき渋谷店に行った。


(後述のピアノリサイタルが終わったあと。)


ハッシー:「飯でも食べる?」
主宰:「やまざき行かない?」
ハッシー:「ああ、久しぶりだしいいねえ。」
主宰:「ハッシーが好きそうなうまい酒があるのよ!」
ハッシー:「好きな酒? 俺なんでも好きだよ。」


相も変わらず斜に構えた奴…。


主宰:「3人いるから、ボトルあけようか?」
ハッシー:「いいよ。じゃあ選んでよ。」
主宰:「これなのよ!」


と、マホニーのカーネロス・ピノノワールのボトルを見せた。


ハッシー:「ふ〜ん…。」


まだ斜に構えている。


主宰:「では、これあけてください!ブルゴーニュグラス3つね。」
店員の酒井君:「はい、わかりました。」


忙しいようでなかなかボトルとグラスが出てこない。忙しいから仕方がないので待ったが、5分以上経過した。


主宰:「すみません。お忙しいでしょうけど、まだですか?」
酒井:「すみません。ただいま…。」
主宰:「早く!早く!早く!早く!(手拍子とともに。)」


冗談で急かしてみたが、新人には荷が重い冗談だったようだ。
かなりムッとしてました。


やっとグラスと栓が抜かれたマホニーが出てきた。


主宰:「これがうまいのよ。」
ハッシー:「…。」


相変わらずである。
しかし、ハッシーは口にした。


ハッシー:「うまっ!」
主宰:「フフ…。」
ハッシー:「参りました!」
主宰:「だろ!」
ハッシー:「これで2980円はすごいコストパフォーマンスだ!今日これ買って帰ろうっと!」


ハッシーとマヤは強いのであっという間に一本あいてしまった。


主宰:「この面子ならもう一本いくか?」
ハッシー:「いいよ。でも、こんなうまい酒の後に一体何を飲めばいいんだ!」
主宰:「う〜ん。確かに難しい。これに勝つとなると値が張るよなあ…。」
ハッシー:「いいよ、俺出すよ!?」
主宰:「まあまあ、そう言わずに。俺も出すからこれ行くか?」


フランソワ・ブッフェのヴォルネイ1erである。


ハッシー:「どんなワインなの?」
主宰:「やまざきに置いてあるブルゴーニュの中では、一番まじめなブルゴーニュらしいブルゴーニュだよ。この蔵のただのブルゴーニュルージュも実はヴォルネイだったりする、こだわりの蔵だから1erはうまいよ〜。」
ハッシー:「じゃあ、それにしよう!」
主宰:「はい、じゃあ、これあけてください。」
酒井:「わかりました。」


あいたボトルが今度は迅速に登場した。


主宰:「これは、まだまだ若いからグラスをたくさん回して開かせないと。」
マヤ:「たくさん回すんですか?」
主宰:「そうだよ。100回転でも足りないかもね。」
ハッシー:「そうかあ、そんなにまわすのかあ。よ〜し!うぉおおおおりゃああああ!!!」


主宰:「さて、実はここできっと面白い事になっているんだよね。」
マヤ:「なにがですか?」
主宰:「僕が回したのと、マヤが回したのとでは味が違うと言うことだよ。」
マヤ:「本当ですか?」
主宰:「じゃあ、まずは僕が回したやつから飲んでみて。」
マヤ:「はい、おいしいです。」
主宰:「じゃあ今度は自分で回したやつをのんでみて。」
マヤ:「あれ?全然香りがしないです…。なんでですか?」
主宰:「どれどれ?あれ、本当に全然香りがしないなあ、せっかく6000円の酒なのにこれじゃ、980円の味だよ。」
マヤ:「ひどーい!」
主宰:「ハッシー飲んでみて。」
ハッシー:「ホントだ。こりゃひどい。」
マヤ:「なんで?なんでなんですか?」
主宰:「僕とマヤでは酒がおいしくなったときのイメージの明確さが違うんだよ。僕の場合はブルゴーニュかくあるべし、とイメージした味になっているけど、マヤは何も考えずに回しただけだろ。要は酒と会話ができていないと言うことなんだよ。」
マヤ:「『お酒と会話』ですか?」
主宰:「そうだよ。たぶん、ハッシーはお酒のこと良く知っているから、ハッシーが回したやつはそれなりにおいしいはずなんだよね。飲んでみなよ。」
マヤ:「おいししいです!でも、村松さんのと味が違いますよ。」
主宰:「どれどれ…。あっ、本当だ、ハッシーのイメージはカリピノだね。ハッシーは確かわかりやすいお酒好きだからなあ。香りが華やかで甘みが多いね。っていうか、さっき飲んでたマホニーと同じ味なんだけど…。」
ハッシー:「やっぱり?マホニーうまかったし、あのイメージしか出来なくて…。」
主宰:「こっちのほうが値段が倍なのに…。それにしてもすごいイメージ力だな…。」


マヤ:「どうやったらおいしく回せるようになるんですか?」
主宰:「いまからおいしいお酒の完成形をイメージするのは無理だから、そうだなあ…。じゃあ、マヤが回したお酒を飲んだ男が、盲目的にマヤに夢中になってしまうような酒をイメージして回してみれば?」
マヤ:「はい、やってみます。」
主宰:「どれどれ。う〜ん…。まだまだだけど、さっきよりはマシかなあ。」
マヤ:「おいしいですか?」
主宰:「1480円ってとこかな。まだまだこれから勉強だな。がんばれよ。」

浅野純子ピアノリサイタル

曲目は下記のとおり
モーツァルトソナタ
ドビュッシーのベルガマスク組曲
ショパンノクターンと大ポロネーズ


前半はそれなりに楽しめた。リズム感がそれなりにしっかりしているので、音楽に構成感を持たせることができる。これは多くの日本人音楽家に欠如している資質であり貴重ではある。
ピアニッシモであっても鍵盤はしっかりと押すのが基本だが、ピアニッシモの奏法に欠点があるようで、鍵盤を舐めるように弾いてしまっている。このため弾きなれないピアノだとタッチの違いで音が出すぎたり飛んだりしてしまうが、今日は飛んでしまって弾きそびれる音符がひどく目立った。
指の動きの早いフレーズはきちんと弾きこなせるのだが、おそらく大雑把でいい加減な性格なのだろう、簡単なフレーズの最後で集中力を切らし、素人でも間違えないようななんでもない音をミスタッチしてしまう。
後半のショパンは構成感を演出することができず、音楽としての体を成していなかった。
今後の研鑽に期待したい。