ワインの栓に関する考察

bebian912007-01-14

昨日、17時からのやまざきの無料試飲会に行ったが、その一部の時間に少し離れて経営者のゆう子りんと話していた。話題はワインの栓についてである。


ワインの栓といえばコルクが定番だが、最近はスクリューキャップのものをよく見かけるようになった。
スクリューキャップといえば、以前はまずい激安ワインなどに採用されていたためどうしても陳腐なイメージが付きまとってしまうが、このところ徐々にではあるが、きちんとしたワインにもスクリューキャップが採用されるようになってきている。


今日ゆう子りんに見せてもらったのはドイツの一部の高級ワイン生産者で採用されはじめた、ガラスとシリコンのキャップだ(写真)。ドイツの醸造学の教授が発明したらしいが、よくみると日本酒の一升瓶のふたと構造は同じである。ただ、ガラスで出来ているので高級感があるのと、瓶との接合部分がシリコンのため、密閉性が極めて高いのが特徴だという。


昨日このような話を伺ったので、未明に自分なりに情報を集めて業界の趨勢などについて調べてみた。
通常のコルクはやはり自然のものなので穴があいていたり、局所的に密度が低かったりしてブショネの原因となってしまう。
それを解決するために作られたのが、下記のように挙げられるいくつかの栓である。これらはコストもコルクに比べて安いため、単純にそう思われがちで、一部の心無い頑固なワインファンからはアラを探す対象となっている。(気持ちはわからないでもないが。)


1.コルクかすの寄せ集め
安っぽいが、寄せ集めて圧縮するので通常のコルクよりしっかり栓が締まる。


2.合成樹脂の栓
ワインの瓶の穴の大きさに合わせて作られるので、栓はほぼ完璧に締まる。合成であるため、環境ホルモンの心配をする人がいるが、人類を常日頃から冒している環境、空気、水、その他のものに比べればきわめて微量であり、解決されるべき「最後の環境問題」と言っていいくらいの程度のものである。


3.スクリューキャップ
密閉性という意味では何よりも優れた栓であるといえる。抜栓後、ワインが余っても完全に密閉された状態を再現できるメリットは大きい。


4.ガラスとシリコンのフタ
密閉性はスクリューキャップと同等かそれに近いものと思われる。密閉性の再現も問題ない。また、再利用が容易そうなので、実現すれば環境にもやさしい。


あまり意識をされることはないが、コルクは樹木である。これを切って生産をしているのである。別なもので再利用可能なら樹木を伐採する必要もなくなるのである。


生産者の側からみると、コストの面はもちろん、品質にばらつきが出にくいので、できればスクリューキャップなどに変えたいと願っている生産者は多いようだ。ブショネにまでならなくても「ボトル差」というものがあり、特にこだわって作っている生産者はせっかく造ったお酒を本当に味わってもらいたい味で愛好者が飲んでいるかが不安なのだそうだ。
また、ブショネであれば返品されるので、生産者や販売者はワインの価格にそのリスクを上乗せする必要が出てくる。非コルクの栓が普及した場合、20〜30本に1本といわれるブショネの確率を考えれば価格に当然(よい方に)反映されることになるだろう。


驚くべきことに、業界ではコルクは「メリットなし」ということで一致しているらしい。ワインスクールでも最近はそのように教えるのだそうだ。


あとは消費者にどこまで啓蒙が広まるかと、どこか有名な蔵(例えばロマネコンティ、シャトーマルゴー、オーパスワン等)の思い切った決断にかかっている。
そのような蔵のどこかが先陣を切れば、追随する動きが広まるに違いない。


ワインは嗜好品なので、「コルクが好き」「ボトル差がまた楽しい」という人がいてもいいと思うし、業界の趨勢が決まっているかもしれない30年後にコルクにこだわってワインを生産する蔵があってもいいと思う。
音楽なら、CDとLPのような関係に例えられる。CDとLPを比べた場合、実務的なメリットでLPがCDを上回ることは無い。が、そのジャケットの大きさや貫禄、古きよきプレーヤーのたたずまいが好きだという人もいまでもいるはずである。
ただそのような嗜好の人々が、CDを批判してもどうにもならなかったように、「コルクでなければダメだ」みたいな考えは改めたほうがいいと言える。