日本の良心

主宰は帰り道、山手線に乗った。席に座れなかったのでつり革につかまって立っていた。
主宰の目の前には若い女性が座っていた。よく見るとかわいいが、なにぶん化粧が濃すぎるいまどきの馬鹿コギャルと思しき様態である。
しばらくすると電車の中で化粧直しを始めた。厚いファンデーションの上にボリュームたっぷりのマスカラの黒色がプリントしてあるかのような悲惨さであったため、まずは目許をコットンで拭き、ファンデーションを塗りなおし、抜け落ちそうなくらいマスカラで増幅されている睫毛にさらに輪をかけて気合でマスカラを塗りたくっていた。


(馬鹿なやつ…。)
(すっぴんのほうが絶対かわいいのに…。)


と思っていると、駅に着いたわけでもないのに突然席を立った。


コギャル:「座っていいですよ。」
近くの老婆:「ありがとう♪」


馬鹿っぽいコギャルの突然の行動に驚きつつ、


(日本もまだ捨てたもんじゃないな…。)


と思った。ぶっきらぼうなせりふはあまりにもご愛嬌だが…。


それにしても目許にくっきりプリントされてしまうあのマスカラ、何とかならんのか?
とてもいいマスカラがあるのを教えてあげたくなった。
(ナンパはしてません。)